京都デニムの京友禅染めを3ヶ月経験して

染色業務を3ヶ月経験して

京都デニムの染色テキスタイルデザイン業務担当(兼Web制作)として、2019年7月に入社後3ヶ月が経ちました。
この3ヶ月で実際に弟子として染色業務に携わってみて、私なりに感じたこと・考えたことについて書き連ねていきます。

教えるのではなく気づかせる?

伝統工芸に携わる職人さんと言うと、非常に厳しい印象があります。
何十年も経験を積んで、それでようやく一人前。
初めは見て学ぶことが当たり前。
仕事をさせてもらえるのは、十分に下積みをしてから。

京都の職人さんならなおさらこのイメージが強くなりますよね。

ところが、京都デニムの場合はそんなことはなく、むしろ逆でした。
想像していたより何倍も早く仕事を任される状況になったのです。

初めにやったのは、京友禅染めの第一段階である『抜染』という方法。
抜染とは、生地の色を抜いて柄を出す着物に用いられた技法です。

京都デニムの鳥獣人物戯画のTシャツやトートバッグは、この抜染で柄を出しています。
繊維の色を抜いてあるので、プリントのように色落ちすることはありません。
ジーンズの柄は抜染後に色挿しを行ってあります。

桑山さん(京都デニムの代表&デザイナー)から手順、やり方を教わった後、「後は見てたから分かるよね?」と、早くもやってみることに。

結果、失敗しました。

抜染は注意すべき点が多く、1回目でいきなりできるようなものでは到底ありません。
気温や湿度、生地の厚さ・種類に完成度が影響されるうえ、型の置き方にわずかでもズレがあると綺麗に色を抜けなくなります(これがまったく同じものを作れない理由です)。

また、抜染に使う抜染剤の分量が明確に決まっている訳ではなく、気温や湿度、生地などの条件を加味しながら、適宜調整しないといけないのです。
これはもう経験と感覚でベストな量を掴むしかありません。

鳥獣人物戯画の抜染
鳥獣人物戯画の型と抜染剤

桑山さんはこう言います。
「抜染は失敗して当たり前」
「なぜ失敗したのかを考えるのが大事」
だと。

その後も上手くいかず何度も失敗し、その度に私は落ち込みました。

ですが、言われたように、なぜ失敗したのかを考えて修正していくうちに、徐々にミスがなくなってきたのです。
「こうすれば失敗しない」というやり方が分かってきたのです。

ここに桑山さんの狙いはあったのでしょう。

ただ単純に教えられたことを言われたとおりにやるのでは、失敗の理由をいつまでも人のせいにすることになる。

そうなると、自分で工夫しなくなり、条件が異なる環境での仕事に対応できなくなるし、自身の成長もなくなる、と。

実際にやって感覚を掴まなければうまくいかないということをわかってるからこそ、敢えて肝心なところを教えないのだと繰り返すうちに気づけました。

教えてもらうのではなく、「気づく」ことによって技術の定着が早くなったのです。

その結果、まだ限られた作品ですが、携わったモノが店頭やオンラインストアに並んでいます。

自分のした仕事がお客様の喜びにつながっていると同時に、京都デニムならでの伝統を次世代につなぐ活動に関わっていると思うと嬉しいです。

華やかで美しい京友禅染めは沢山の工程の1つ

一般的にイメージされる京友禅染めは、筆を持った職人さんが華やかな色彩で着物を染めているシーン。
京都デニムのホームページでも、色挿しを行なっている写真が印象的ですよね。

ところが、色を挿すのは最終段階で、京友禅染めのいくつもある工程の一つ。
華やかなのは最後の仕上げだけと言ってもいいかもしれません。

実際は、けっこうな体力仕事です。

特に抜染は、上述したように環境の変化に左右されます。
その時々の環境に合わせてやり方を変えないといけません。

それは何故かと言いますと、自然環境の中でこそ京友禅染めの美しさや趣深さが表れて、より繊細に映えるから。
だから、部屋の環境を人工的に作ったり整えたりはしないのです。

今年の夏の暑さにより、室温は40度越え。
そんな中、汗まみれになりながら抜染を行なっていました。

抜染剤はすぐに気化してしまい効力が薄れるうえに、暑さでドロドロに溶けるので、手際よく次から次へと抜染していかねばなりません。

当然、暑いと失敗する可能性は高くなります。
頭の中でしっかりと手順を把握して効率よく進めないと、すべてが台無しになることも。

その上、抜染後には「蒸し」の工程があります。
40度を超える室温の中、さらに火を焚いて生地を蒸すのです。

これはもう華やかでも何でもありませんね。
もはや修行に近い状態です。

このように、京友禅染めは非常に体力を使う時間勝負の仕事。
華やかなイメージだけを持っていてはとてもできない仕事なのです。

ということが今年の夏、身に染みて思い知らされました。
(私の場合、ここまで振り切ってくれたおかげで逆に楽しめましたが…)

染色業務は緊張感もあります

  • 在庫が一つしかない
  • 明日までにお客様に送る必要がある
  • つまり、失敗できない

ただでさえ失敗しやすい抜染を、この状況でやるのはなかなかに緊張感があります。

でもそれが面白いのです。
楽しさに変わるのです。

ミスなくきっちりできた時は、とてつもない達成感を味わえたと同時に、安堵感に包まれました。
こんな経験は他の仕事ではあまりできないでしょう。

私が担当しているもう一つの業務(Web制作)では、こんなことはまずあり得ないですから。

京都デニムの染色業務では、やりがいだけでなくスリルも味わえます。

伝統工芸は黙々とやり続けるものだと思われがち

伝統工芸職人と聞くと、ただひたすら目の前のことをやり続けるイメージがありますよね。
私も京都に来る前はそんなイメージを持っていました。

しかし、京都デニムは違います。
決められたことを決められた通りにやればいい、というものではなかったのです。
染色業務は日々変わる自然の環境に柔軟に対応しないといけないため、マニュアルなんてありません。

そもそも、京友禅染めをデニムに施した時点で、そういった固定観念的なイメージとは異なります。
それが京都デニムなのです。

この3ヶ月、染色テキスタイル業務だけではなく様々な仕事を経験させて頂きましたが、総じて言えるの「自由度が高い」ということ。

自由度が高いというのは、
たとえ染色業務でも自分から向上心を持って取り組まないとやるべきことを見失ってしまう、ということでもあります。

常に目標をもって仕事をし、自分で何か生み出したいと考える方にとっては、最適な環境となるでしょう。

私の今の目標は、自分が一から考えた作品を店頭やオンラインストアに並べ、お客様に実際に使っていただき喜んでもらうことです。

まとめ:3ヶ月間京都デニムの染色業務に携わってみて

京都デニムは、デニム生地に京友禅染めを施し、伝統を次世代につなぐ活動をしているブランドです。

100年先や200年先を見据えて仕事をするのは京都ならではだと思います。
これまで1000年以上続いてきた都だからこそ、そこまで見通せるのでしょう。

3ヶ月程度の私にはまだ到底分かりません。

ただ一つ言えるのは、文化がこれから100年続くというのは、京都ひいては日本の希望ではないか、と。
伝統工芸や文化の継承は、日本の未来そのものに関わってくる問題なのではないか、と。

しかし、
伝統だから残そう
伝統だから大切にしよう
伝統だから凄いんだ

という固まった考え方ではおそらく通用しない時代が訪れています。
世代に応じて柔軟に形を変えてこそ、日本らしい「用の美」としての文化と呼べるのではないでしょうか。

根幹となる技術や思想は継承しつつも、未来を見据えた形に進化する。

京都デニムは、デニムに京友禅染めを施すという時代に合わせた革新と変化を見事達成している会社です。

私はそこに惹かれ、今こうして誇りを持って職人側の立場としてここにいます。

ですが、この急速に移り変わっていく時代に文化を広めていくためには、また新たなる変化と進化を遂げる必要が出てくるでしょう。

それを担うのが私たち若い世代の課題であり、文化を継承される側としての使命なのかもしれません。

まだ3ヶ月。
これからより精進していきたいと思います。