四季折々の花に由来する伝統色を紹介します

四季折々の季節で様々な草花の色合いが楽しめる日本ですが、今回は身近な花に由来する日本の伝統色を紹介します。

桜色 花言葉 高尚・神秘

伝統色

京都には至るところに桜の名所があり、私たちの目を楽しませてくれます。皆さんは「さくら色」と聞いて、どのような色を思い浮かべますか。
和色大辞典によると、「桜色」はかなり淡いピンク色となっています。ピンク色のことを伝えるのに「桜色」と言う方は少ないと思いますが、それは「さくら色」がそのものの色ではなく、桜のある風景の一部として私たちの心に刻まれているからではないでしょうか。卒業や入学など、春ならではの記憶が「さくら色」の中に詰まっているのだと思います。

藤色 花言葉 歓迎・陶酔

伝統色

藤といえば薄紫色の小花が集まり、垂れ下がるように咲いている、なかなか他には見られない特徴をもっているお花です。その優美な姿だけでなく、長寿で繁殖力の強いことから、豊作の予兆や神を招く依代として昔から親しまれてきました。京都の藤の名所は何といっても平等院ですが、竜安寺や八瀬も見事です。
また、「藤」は十大紋の一つとして、家紋としてもよく使われています。藤のつく苗字以外にも、藤が家紋となっている家がたくさんありますので、御自身の家紋を調べてみるのも面白いかもしれません。

支子色 花言葉 幸福者・清浄

伝統色

梔子(クチナシ)は春の沈丁花、秋の金木犀に並ぶ強い芳香をもつお花です。梔子は香りと、大きな肉厚の花から天国に咲くといわれ、邪悪なものを追い払うとして古来より親しまれてきました。また黄色の染料としても代表的な梔子は、古くから用いられ、布だけではなく栗や芋のきんとんやたくあんの色づけに使われます。
洋名では「ガーデニア」という名で、香水にもよく使われていますが、植木や街路樹としてみかける方も多いと思います。梔子の良い香りをまとって、今日の一日を豊かに過ごしてくださいね。

牡丹色 花言葉 壮麗

伝統色

中国が原産である牡丹は元々は薬用として用いられていましたが、その美しい花姿で唐の時代に大流行し、日本でも多くの品種改良がなされました。
冬は一年で一番お花が少なくなる時期にも関わらず、日本には昔からお花を飾ることで心を伝えるしきたりがあるので、お正月の祝い花の習慣は今でも根強く残っています。紅白、緑色が多くみられますが、自然界に色がなくなる時期に意識的に牡丹などの強い色の植物を用いることで色からもパワーをもらっていたのではないでしょうか。

紅梅色 花言葉 忠実・高潔

伝統色

現在の日本では花といえば桜をさしますが、奈良時代以前では梅をさしており、庶民から知識人まで幅広く愛されていました。古来の日本人は特に梅の香りを好んだようです。しかし梅は、花を摘むなど外部からのストレスを受けると香りが変化しやすいので、香りの採取は困難とされています。少しでも香りを身近に楽しむために、庭に梅の木を植える習慣が広まったのかもしれませんね。
京都には右京区の梅宮大社をはじめ、北野天満宮や御所などたくさんの梅の見どころがあります。梅は花弁の形も様々に美しいですし、花の位置が低いので香りも存分に楽しむことができます。

菫色 花言葉 奥ゆかしい

伝統色

菫は世界各地に約400種もあるといわれます。日本原産のものでは、「ミヤマスミレ」などが自生していますが、西洋で菫といえば「ニオイスミレ」が真っ先に挙げられます。ニオイスミレはヨーロッパではかなり古くから香水の原料として使われてきました。シェイクスピアの「真夏の夜の夢」では恋の媚薬として、ローマではニオイスミレを漬け込んだバイオレットワインが作られていたなど、用途も様々なようです。
また、「エディブルフラワー」(食用花)としてもスミレは人気で、砂糖漬けやサラダ、スイーツの彩りとして登場します。日本でいうと菜の花や紫蘇、桜などを食す感覚でしょうか。

桃色 花言葉 愛嬌

伝統色

桃は中国から渡来し、弥生時代には既に食されていたとても古くからある植物です。古代の中国では非常に重要視され、神仙思想に結びつく「仙果」としての意味をもっていました。中国の故事には桃が出てくる言葉がいくつも残されていますし、「西遊記」や「封神演義」などにも桃が登場します。
また、桃の花は女性の美貌を象徴する言葉としても用いられます。私たちもピンクといえば女性らしい色と一般的に認識していますね。どうやらそのイメージはかなり古くからあるもののようです。美味しい実がなる季節を迎える前に、可憐な桃の花をぜひ愛でてみてください。

杜若色 花言葉 幸運・雄弁

杜若はアヤメ科の植物で、和歌にも詠まれているように元来は染料として用いられていました。書付花(かきつけはな)からかきつばたに変化したといわれています。生け花では杜若のみで葉の美しさを見せる生けかたが発展し、絵画や着物のモチーフとしても多く使われ、文化人たちにも愛されていたようです。お花の美しさはもちろんですが、葉も含めた全体の洗練された形状に魅了された人は多かったのではないでしょうか。
5月から6月の中頃にかけて山科の観修寺、平安神宮、深泥が池で見事なアヤメ科のお花が見どころを迎えます。日本人の心に受け継がれる美をぜひ感じてみてください。